新しい年、「憲法を取り戻す年」にしよう 世界に遅れず、改めて希望と確信を
丸山 重威
こんなことを書くと、随分楽観的で、希望的観測に過ぎるように思われそうだが、2008年、新しい年は、日本がこれまでの閉塞的な状況をはねのけ、民衆の胎動が将来にむかって本格的に動き出す年になるのではないだろうか。
来年のいまごろ、政権の担い手が、福田現首相なのか、それとも小沢民主党代表なのか、あるいは全く違う誰かなのかはわからない。しかし、2007年に示された「民意」と「モノの道理」は、間違いなく引き継がれ、この社会の中で定着して行くに違いないからだ。
▼国民に不信任された「安倍政治」
2007年、「戦後レジームからの脱却」と「美しい国」を目指し「私の政権で憲法改正を」と意気込んだ安倍首相は、前年暮れに教育基本法の改正と防衛省昇格法を成立させ、「さあ、今度は国民投票法と教育3法だ」と、心躍る思いで新年を迎えたに違いない。ところが、新年の1月3日、「家賃ゼロの衆参議員会館に多額の『事務所費』支出 自民・民主議員ら18人が年1千万円超」と報じたのは共産党機関紙「赤旗」。伊吹文科相、、松岡利勝農相、中川昭一自民党政調会長らの名前と金額が列挙されていた。
そして柳沢厚労相の「女は子どもを産む機械」発言、松岡農相の自殺…と続く中で、国民投票法、教育3法、イラク特措法延長、在日米軍再編促進法などの強行採決の連続は、さすがに、国民に「危険な内閣」を印象づけた。そして、年金記録の喪失を初めとする高齢者の生活危機に加え、働いてもまともな生活ができない若者の実態にも焦点が当たり、「新自由主義・構造改革」の問題点が明らかになっていった。
参院選の敗北は、久間防衛相の「広島、長崎への原爆投下もやむを得ない」発言、これも事務所費疑惑の赤城農相なども含めて、そうした「安倍政治」に国民が突きつけた「不信任表明」だったのである。安倍首相はなおも強気で「続投」を宣言したが、9月12日、突如として辞意を表明せざるを得なくなり、9月26日、福田内閣の発足となった。
▼広がる国民の声と動き
一方で、こうした安倍政権に対する国民の各分野からの「異議申し立て」の広さと大きさは、目を見張らせるものがあった。思いつくまま、いくつかの例を挙げてみよう。
・政権が掲げた「憲法改正」論への賛否は、読売新聞を含め
た各新聞の調査で、低下を続け、その逆に「9条を護るべ
きだ」とする世論は拡大、全国に広がった「九条の会」は
6801団体に達した。2008年5月に開かれる「九条世
界会議」は、世界が日本国憲法を先頭に「武器のない世界」
「戦争のない世界」を切り開いていく第一歩になるだろう。
・この理念は、日本の戦争責任の問題とも関わっている。安倍
首相の「広義の意味の強制はあったかもしれないが、私家に
侵入して女性を拉致し慰安婦にするというような狭義の強制
はなかった」との発言や、右派文化人による意見広告への
反発もあって広がった慰安婦問題についての日本の戦争責
任を問う声は世界に広がり、米国議会に続いて、カナダ、
韓国、オランダなどで日本を非難する決議が採択された。
廬溝橋事件、南京虐殺から70年。歴史を歪めようとする
力への抵抗は強まった。中でも、沖縄戦での集団自決につ
いての教科書力への抵抗の書き換えに抗議する集会には、
保守・革新を問わず沖縄県の全首長が結集、参加者は会場
に入りきれない11万人が参加した。
・政府が「譲歩」せざるを得ない問題も次々と明らかになって
いる。C型肝炎の薬害問題や、原爆被災者の認定問題は、
線引きすることで「国の責任」を回避しようとする政府の意向
を超えて前進し、原爆症基準については残されたままだが、
肝炎問題では、年明けにも議員立法で全員に保障をさせる
譲歩を勝ち取った。
「自立」の名で施設から追い出し、支援とは全く逆の結果を
生んで、成立以来問題になった障害者自立支援法への見直
し要求の闘いも、障害者自身によって広がり、10月30日、
日比谷野外音楽堂には障害者6500人が集まり、見直しを
求めている。
・75歳以上の後期高齢者を一般の医療保険から切り離し、よ
り経済主義で対応しようとする「後期高齢者医療制度」が来
年4月から実施されることへの運動は、全国的に高まり、見
直しを求める声が広がっている。9月の「日本高齢者大会」
で「抜本的見直し」を求める特別決議が採択されたほか、全
国の地方議会では、都内の全26市議会をはじめ、少なくと
も300議会で見直しを求める意見書が採択された。
・前年から問題になってきた「格差」「ネットカフェ難民」な
ど青年に関わる問題も、5月20日、明治公園での全国青年
大集会には3300人が参加、各地で残業代未払いや違法派
遣の企業の告発などが相次いだ。首都圏青年ユニオン、NP
全労連、連合などの参加者によるO自立生活支援センター
「もやい」、「反貧困ネットワーク」も発足した。
私たちの日本国憲法は、戦争の惨禍が再び起きることがないように、と決意した日本人が、軍備を持たず、戦争を放棄して、日本人と日本の生存と安全を「平和を愛する諸国民の公正と信義」に信頼して確保することを宣言した。それだけでなく憲法は、日本国民はもちろん、全世界の国民が、みんな「恐怖と欠乏」から免かれ、「平和に生きる権利」を持っていることをうたっている。
これらの運動は、そうした憲法の理念を生かし、進める運動だ。みんな憲法にそれぞれ具体的に書かれた基本的人権、つまり「人間らしく生きる権利」に基づくものなのである。
▼憲法の精神を再確認しよう
2008年1月3日、世界はこの日から始まる米大統領選のアイオワ州共和、民主両党の党員集会に注目する。泥沼化したイラク戦争は、スペイン・アスナール、イタリア・ベルルスコーニ、日本・小泉、ブレア・イギリス、ハワード・オーストラリアと相次いで退陣した。元気がよかったブッシュ大統領の「ネオコン」の側近たちも政権を去って、世界を力で動かそうとする米国政治の誤りが明らかになった。韓国には新政権が生まれたが、「南北協和」の路線は着実に進み、南北間の鉄道は貨物便が往来する関係になりつつある。
2007年7月、ドイツ・ハイリゲンダムで行われた先進国首脳会議(G8)には、新自由主義政策に反対し、公正な経済秩序と環境保護の強化を求める人々が約8万人も集まり、近くの街、ロストクで大規模な集会とデモが開かれた。
「世界人口ではたった13%なのに、世界の国民総生産の3分の2を占める国の代表たった8人に世界の将来を決められてはたまらない」という人々の願いは、国内外で格差を拡げる新自由主義経済政策、アフガニスタンやイラクでの軍事紛争、地球温暖化、途上国の債務の放置など、切実なものばかりだ。ことしの北海道サミットでも、こうしたNGOの運動が、少なからず世界の歴史に影響を与えていくことは間違いない。
「九条世界会議」も、こうした運動と結びついて初めて、人類の歴史にとって大きな意義があるものになるだろう。
世界の大勢は、民主主義と戦争のない世界に向かって少しずつだが着実に動いている。憲法を持つわれわれはそこに確信を持って、一つ一つの運動を大切に、希望を失わず、「真実」と「道理」を信じて、2008年を「日本国憲法再生」の年にしよう。メディアはその先頭に立たなければならない。(2008年元旦)
「どっちがトップだ?」
丸山 重威
▼「どっちがトップだ?」―新聞社の整理部で、翌日の朝刊を作る論議をするとき、誰が見てもこれがトップだ、とはっきりわかる日はそんなに多くない。重要ニュースがいくつか並んで、コンテストのように、「私の方が重要だ」と競い合っている。
▼そんなとき、どこで誰が判断するか。最終的には編集局長だったり整理部長だったりするだろうが、大事なのは、そのニュースを書き、重要性をアピールする記者自身の姿勢。ジャーナリズムとは、ほとんどその「伝える」意思にかかっているといってもいい。柳沢伯夫厚労相の「生む機械」発言や「子どもを二人持ちたいという健全な考え方」発言は、もちろん大問題だが、これで国会が止まり、ほかの問題が隠されてしまうとなると少し気になることがある。
▼いくつか例を挙げる。1月30日「法制審議会の部会が刑事裁判への被害者参加制度の要項を決定、裁判が『復讐の場』になる恐れ」、5日「自民党法務部会小委員会が共謀罪の名称変更などの修正案で2月中の成案目指す」、6日「米軍再編経費含む補正予算、与党単独で成立」、7日「自民党総務会でグアム移転に税金を投入する米軍再編促進法案を了承」…。その間に、愛知県知事選と北九州市長選もあったし、海外では、4日には米軍がイラク戦最大規模の掃討作戦開始」を明らかにし、5日には、ブッシュ大統領が予算教書。01年以来の費用は八千億ドルに達し、ベトナム戦を超える。
▼「目くらまし」という手法がある。
手品師が違う方向に関心を集め、その陰でうまく細工をするやり方だ。政治家は手品がうまくなった。マスコミも巻き込み、乗せてごまかそうとする。目くらましされてはならない。
憲法を護る意思と活動を広げよう 2005年総選挙を終えて思うこと
丸山 重威
これから歴史的にどう呼ばれることになるか分からないが、自民党が大勝した「郵政民営化9・11総選挙」の結果、改憲論議が急ピッチで進みかねない情勢になっている。
選挙結果に一喜一憂したり、考え込んだりしてはいられない。いま、発言しなければ、歴史や子ども達の将来に禍根を残すだけではなく、自分たちの良心にも、取り返しがつかない結果を招くのではないか。その思いの中でのメモである。
1:いま何が起きているか
今回の選挙で、自民党は完全に「憲法隠し」をし、それがまんまと的中した。その中で出てきている現象がいくつかある。
▼国民投票法案審議の具体化
衆院本会議は22日、「憲法改正国民投票法案」を審議するための「日本国憲法に関する調査特別委員会」を設置することを、自民、公明、民主の賛成多数で決定した。特別委員会の設置については、当初自民党が国会法を改正して常任委員会にすることを表明したため、騒ぎになりかけたが、公明党の異論で修正、特別委員会に落ち着いたが、自民党の改憲戦略が具体化したもの。いっそうの運動が必要になってきた。
選挙が終わって自民党は、9月14日午後、衆院各派協議会の席上、自民党は、21日召集される特別国会で憲法改正手続きを定める国民投票法案を審議するため、新たな常任委員会として「憲法委員会」(仮称)を設置することを提案した。これに対し、民主党も「基本的に賛成だ」と応じ、共産、社民の両党の反対を押し切って、国会法の改正が提案される方向が示された。しかし、翌15日、公明党が中央幹事会を開いたところ、神崎代表や冬芝幹事長から常任委とすることに異論が出た。いまここで、国会法改正などの形で紛糾させるべきではない、という現実案。自民党もあっさりこれを受け、16日の協議会では常任委員会を修正し、「憲法調査特別委員会」(仮称)として設置することにした。
問題は民主党で、報道によれば、22日の議運委では「やり方が拙速だ」と言ったものの「中身について反対しない」として、国民投票法案を審議することに賛成しており、いよいよこの論議が進む兆し。自民党は、特別国会で成立させる意向だと伝えられており、憲法改正に向けての手続きがスタートした。
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