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みんなで作って、配って読んだ
38年職場日刊紙「雑草」が10000号

丸山 重威

 平塚市の高砂香料工業労組平塚工場支部の職場日刊紙「日刊雑草」が、昨年11月28日、1万号を迎え、2月1日、記念集会が開かれた。ガリ版で発行した1969年1月20日の創刊から、38年かかって到達した1万号で、2月1日号は10041号。記念集会には、かつて「日刊雑草」の編集にも携わったことがある会社側の酒井俊伸工場長も出席、地元機関紙協会神奈川県本部、神奈川県職労湘南支部などの関係者のほか、日本機関紙協会の桜井輝治「機関紙と宣伝」編集長、元朝日新聞の岩垂弘「平和・協同ジャーナリスト基金」代表運営委員らも駆けつけ、1万号を祝った。
 高砂香料は、フレーバーと呼ばれる食品や飲料向けの香りのほか、フレグランスと呼ばれる香水や化粧品、家庭用品向けの香りの素材をメーカーに提供する国際的な原料メーカー。平塚工場はその主力工場で、工場のほか隣接の研究所などを含め、約500人が働いている。

 「日刊雑草」は、1968年春闘で毎朝配った朝ビラ「おはよう」から「支部ニュース」が頻繁に配られるようになり、組合員から募集した69の題名から「雑草」が選ばれ、毎朝、工場の門前で配られてきた。会社は最初は妨害したが、この日の記念集会に出席した酒井俊伸工場長は、「会社と組合にそんなに壁はないと思う。みんなで働く環境を良くしていこう、という考え方で『雑草』も生きてきている。何でも言い合える事業所として雑草の精神を生かしていってほしい」と激励した。

 機関紙協会の桜井編集長は「職場の日刊紙で1万号を超えたところもあったが、いま途絶えて日刊ではなくなっているところも多い。数人が無理して作っているのではなく、みんなでやっているところが大切だ。気張らず続けていってほしい」、岩垂さんは「労働組合が強い職場には必ず良い機関紙があり、良い機関紙があるところには良い組合がある。素晴らしい労働運動であり、『雑草』は最高のレベルに達している。継続は力なり、だ。頑張ってほしい」と述べた。

これまで確認されてきた「雑草」の編集原則は、@読者は誰か忘れずに、みんなの声をAたくさんの事実をに基づいて真実をB切実で当たり前の要求を、取り上げるほか、C周りの人と心を割って話し合い、生活と職場の全ての問題を取り上げるD必要なこと早くみんなに知らせるE組合、職場をみんなのものにするために努力するF常に編集者が学習して広い展望と確信が持てるように努力する−とうたっている。「みんなで作る」ことで進めてきた運動はフランス労働総同盟(CGT)に紹介されたこともあるという。
 「雑草」はB4判で印刷、手書きとワープロを併用した1万号記念号は、12ページの写真入り特集だった。この日の1041号は「今日の夜 記念集会」と、プログラムやお祝いのメッセージを掲載した。事務局次長の今井精一さん(JCJ会員)の基調報告によると、現在の組合員の約半数、年間述べ1000人以上の人が門前配布に参加している。職員が出勤してくる8時15分からの門前配布には、「みんなで作り、配り、読む」日刊紙を心がけている、という。

 集会参加者の話し合いでは、「インターネットもあるけど、やっぱり『おはようございます』といって手渡すのが新聞の神髄だ」「作らなくても、参加することで、職場のコミュニケーションが強まっている。おかしいことはおかしいと言える。雑草は『常識』をつくっている」「会社にとっても、働きやすい職場はプラスになっている。「最初は青年婦人部主催の構内の職場対抗マラソンは、いま工場と組合文化部の共催になって、みんな燃えている」「それでも職場には、補助的ではあるが不正規労働者が入ってきている。この人達に手を延べて行くのも課題ではないか」などの声が出た。

 いま、食べ物不安から、生活できない賃金、年金や医療など生活の問題から、教育、集会への規制、そして憲法改定論など問題が山積し、国民の運動が広がっている。しかし、マスメディアがその運動をきちんと伝え、国民の議論に役立っているか、が問われ、オルタナティブなメディアが求められている。職場から出発した疑問は、必ず日本全体の政治や経済、社会の在り方に繋がっている。労働現場に足を据えた、小さな職場のジャーナリズムは、さまざまな示唆を与えてくれている。
(JCJ「視角」より転載)
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